クルマの燃費が悪化する「ダメな走り方」って結局何なの?→専門家の指摘が的確すぎた!

クルマを運転する際は、おカネやガソリンの無駄遣いを防ぎ、燃費のいい走り方をしたいものです(EVの場合は電費)。そのために必要な考え方と「やってはいけない走り方」について、安全運転講習会や試乗会のインストラクターも務める筆者が解説します。(モータージャーナリスト 諸星陽一)

タイヤの空気圧は

「高すぎ」も逆効果!

 クルマユーザーにとってガソリン価格の上昇は頭の痛い問題です。昨今は少し下落している場面も見られますが、数年前の水準には戻っていません。 そうした状況下では「燃費の良い走り」をして、ガソリン代を節約したいところです。

 そこで今回は、効率良く走る方法について考えていきます。電気自動車(EV)のユーザーが取り入れやすい内容もお伝えしますので、「電費」の改善に取り入れてみてください。 

 まずは、クルマを走らせる前にできることから見ていきましょう。最初に気をつけたいのがタイヤの空気圧です。タイヤの空気圧が下がっていると走行抵抗(進行方向とは逆向きにかかる抵抗力)が増え、燃費が落ち込みます。

 タイヤの空気圧は、実は気温と密接に関連しています。気温が高いとタイヤ内の空気が膨張し、空気圧も上昇します。逆に気温が下がるとタイヤ内の空気が収縮し、空気圧も低下します。夏のうちは気にならないかもしれませんが、秋以降には要注意の項目です。

 クルマの車種ごとにメーカーが決めている「車両指定空気圧」は、運転席のドアを開けた際、ボディ側に貼ってあるシールに記載されています。タイヤの空気圧を高めて燃費を良くしようとするあまり、メーカー指定の数値を超えるレベルまで空気を入れるのはNGです。指定空気圧を上回ると偏摩耗の原因になり、タイヤが本来持っている性能を引き出せなくなります。

 適正な空気圧を保つ上で意外と重要なのが、荷物の量を減らしてタイヤにかかる負担を軽減することです。あなたは、クルマの中に余分な荷物を積んでいないでしょうか? マンションにお住まいで、戸建て住宅と比べると車庫のスペースを確保できない方 や、離れた場所に駐車場を借りている方などは、たまにしか使わない荷物をクルマに入れっぱなしにしていることも多いものです。

 もちろんやむを得ないことはありますが、余計な荷物は「無駄に運ばれている」だけなので、できれば降ろしたいものです。

カーエアコンを上手に使って

燃費悪化を防ぐ!

 次に、周辺機器の使い方についてです。カーエアコンを使い過ぎることも燃費の悪化につながります。特に今のような暑い季節は、駐車中の車内温度は劇的に高くなります。そこで、クルマを走らせる前に車内を涼しくしようと、エンジンを始動してアイドリング状態にしたまま、エアコンをガンガンかける人もいるでしょう。

 この際、暑い空間に居たくないからと、車内が冷えるまでクルマを降りて待っている人もいます。ですが、そもそもドライバーが乗っていないクルマでエンジンがかかっているのは危険です。

 車内温度が高いときは、対角線上にあるドア(右前と左後など)を開けて、片方のドアをパタパタと開け閉めすると熱い空気を効率よく外に出せます。そして、エンジンを始動して風量を「最大」、設定温度を「最低」、モードを「外気導入」にした上で走り出すと、車内温度を素早く下げることができます。

 少し時間が経ったら、モードを「外気導入」から「内気循環」に切り替えることで、エアコンの効率をさらにアップできます。設定温度の下限が「18℃」などと決まっている場合でも、スイッチを押し続けると「MAX」と表示が変わり、さらに下げられる車種もあります。気温調整を自動で行う「オートモード」に対応しているクルマもあるので、ご自身のクルマはどういう設定なのかを知っておくことも大切です。

 そもそも、車内温度を上げないことも重要です。そのためには、フロントウインドウにカーシェイドを置いたり、赤外線カットフィルムを貼ったりすることも効果的です。ただし、フロント3面に張るフィルムについては、可視光線の透過率に規制があるので信頼できる業者を選ぶことが大切です。

 ちなみに、駐車時間が短い場合には、ウインドウやサンルーフを少し開けておくことで熱い空気を逃がす方法が昔から使われてきました。しかし、最近はゲリラ豪雨も多いですし、防犯上のことを考えれば、あまりおすすめはできません。

クルマの燃費を悪くする

ダメな走り方とは?

 さて、走り方です。走行モードを設定できるクルマは、「エコモード」などの燃費重視のモードを選ぶようにしてください。そして、むやみな急加速は避けましょう。特に後続車がおらず、急ぐ必要がないときなどは、アクセルをジワッと踏んでゆっくりと発進するのが高効率です。その際は、右足のかかとをフロアに付けて「親指の付け根」でペダルを踏むと、足首の動きが安定する上、より細かな操作ができます。

 燃費を高める上では、フットブレーキを使い過ぎないことも重要です。 エンジン車でブレーキを使うと、運動エネルギーを熱エネルギーに変換して大気中に捨てていることになります。そのため、できる限り使わないほうが効率は上がります。

 例えば、先の信号が赤なのにアクセルを踏んで加速してから、ブレーキペダルを踏んで急停車するのはガソリンの無駄遣いです。状況に応じてアクセルを緩め、エンジンブレーキを効かせて止まったり、信号の切り替わりを上手に狙って運転したりした方が燃費も良くなります。

 ちなみに、EVやハイブリッドカーで働く回生ブレーキは、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収し、再利用できます。アクセルペダルを緩めるだけでも回生ブレーキは効きますが、一部の車種はブレーキペダルを踏むことでより回生量を増やせます。下り坂では、その充電効率はさらに増します。

 そのため、下り坂の直前でクルマを満充電してしまうと、回生ブレーキを駆使して無料で充電できるチャンスを無駄にした挙句、わざわざお金を払って充電していることになります。 EVユーザーは「いつどこで充電するか」も考えながら、効率的なルート設計をしてみてください。

 そして実は、ガソリン車もどこで給油するかが重要です。燃費という本題からはちょっと外れますが、一般ドライバーにとっては「1リットルで何km走れるか」ではなく「100円で何km走れるか」こそが重要です。

 その観点では、高速道路に乗ってから、サービスエリア(SA)内のガソリンスタンドなどで給油するのはお金が少々もったいないと言えます。高速道路上のガソリンスタンドはガソリンの輸送にコストがかかるほか、地域内の価格競争が生じないため、価格が割高になりがちだからです。

 休日の高速道路のSAでは、ガソリンスタンドに給油待ちの列ができていることもしばしばですが、これはお金だけでなく時間の面でも結構な無駄です。最近はガソリン価格を検索できるアプリもあるので、それらを利用してガソリンスタンドを探し、給油してから高速道路に乗ることをおすすめします。

 一方で、ここが難しいところなのですが、安いガソリンを求めて下道をさまようのも非効率です。安価なガソリンスタンドは行列になっていることも多いので、移動と給油でさらに時間をロスしてしまいます。わずかな価格差にこだわり過ぎず、もともと予定していたルートの周辺で、比較的安価なガソリンスタンドを見つけて給油するくらいのバランス感覚がベストでしょう。

高速道路では速く走るほど

燃費が悪くなる!

 燃費の話に戻します。高速道路では基本的に、速度を上げれば上げるほど燃費が悪くなります。その要因は空気抵抗です。空気抵抗は速度の二乗に比例します。80km/hで走行しているときの空気抵抗は、40km/hで走行しているときの4倍に相当します。

 しかし、料金を支払う代わりに早く走れる高速道路は「時間を買うために乗るもの」だと筆者は考えます。最低速度制限もありますし、燃費を意識しすぎるあまり、ゆっくり走っては本末転倒です。ですので、もし時間に余裕があるのなら、80km/h程度で走るのが理想です。

 速度を上げすぎると、先行車に追いついて車間距離が近くなり、ブレーキを踏む頻度も上がります。ブレーキを踏んで速度を下げてから、再加速でアクセルを踏むという行為の非効率さは、ここまで読んでくださった皆さんにはお分かりでしょう。

 また、昨今の高速道路では、先行車との車間距離や車速を自動調整する機能「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」を利用している方が増えています。ただ、このACCも完璧ではなく、全てを機械任せにして漫然と走っていると、先行車に追いつくたびにブレーキが作動するパターンもあります。

ACCに頼りすぎると

逆効果になる場面も!?

 これを避けるには、あらかじめ車間距離を長めに設定しておくといいのですが、そうすると今度は自車の前に車線変更して入ってくるクルマが増えます。目の前のクルマとの車間距離を維持しようとしてACCが作動し、自車が減速することもあります。

 ACCの仕組みによっては、自車が減速したあとに車線変更をすると、設定速度に戻すために強い加速をする場合もあります。空いている高速道路では、ACCを使うと燃費が良くなるのですが、ある程度通行量が増えてくると、このように燃費のいい制御ができないこともあります。場面によって上手に利用していくことが大切です。

 気になる方は、メーターパネルにある燃費表示計で「瞬間燃費」を確認し、ACCに任せるべきか否かを判断してみてください。ガソリンスタンドの件などにも共通していますが、燃費向上においては特定の手法にこだわり過ぎず、バランス感覚を持って運転することが重要です。

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