レクサスの都会派コンパクトクロスオーバーである「UX」。レクサスらしい走りの性能と洗練されたデザインが特徴のモデルですが、レクサスラインアップにおいては、やや影の薄い存在。やはり高級ブランドのエントリーモデルというポジションは難しいのでしょうか?
レクサス「UX」は、2018年にデビュー。都市部でも扱いやすいボディサイズながらSUVならではの力強さを感じさせ、かつ洗練されたデザインを持つ都会派コンパクトクロスオーバーとして登場しました。ハイブリッド車及びBEVを合わせた電動モデルの販売比率はグローバルで80%と、レクサスのラインアップにおいて電動化を牽引するモデルでもあります。
厚みのあるボディとくっきりとしたキャラクターライン、存在感のあるスピンドルグリルは、さすがレクサスといった雰囲気。男性でも女性でも似合う懐の深いデザインだといえます。
パワートレインには、2.0L 直4直噴DOHCエンジンを搭載するガソリンモデル(初期モデル)のほか、2.0L ハイブリッドシステム、そしてBEVモデルも用意されています。ハイブリッドの250h F SPORT(AWD)に試乗したことがありますが、しっかりとしたボディ剛性と、滑らかでありながら深みのある、重めに味付けされたハンドリング特性が心地よく、ワインディングでも高速道路でもレクサスらしい走りを楽しむことができました。
そんなUXですが、2023年の販売は、1000台を超える月もあったものの、今年(2024年)は400~700台程度にとどまっている状況。目標月販販売台数1000台に対して、販売数が伸びているとはいえません。
UXに対しては、走りやデザインなど概ね高評価のユーザーが多いようですが、内装の質感がチープであるとか、後席やラゲッジスペースが狭いといった不満の声も。ただ筆者が見た印象では、それほどチープにも感じませんでしたし、車格やデザイン優先のコンセプトを考慮すると後席やラゲッジもこんなもんかな、とも思います。
しかしながら、価格も含めて考慮すると「割高感」は否めないと感じます。UXの価格は455万9000円〜で、もう少し出せばひとクラス上のNX(485万円〜)が買えてしまいます。サイズもひと回り大きく、ゆとりのある走りや実用性の高さ、シャープなデザインのNXを選ぶほうが「賢い」と考える人は少なくないでしょう。サイズ的な制約がないのであれば、NXが非常にお得なモデルに見えてくるぐらいの価格差です。
レクサスのエントリーモデルといえば、かつて「CT」というハッチバックモデルがありました。2011年〜2022年まで販売されていたCTは、当時のレクサス最小のボディサイズをもつ、アウディのA3スポーツバックやBMWの1シリーズなどに対抗するプレミアムコンパクトであり、プリウス譲りのハイブリッドを武器に、高い環境性能と高性能を特徴とするモデルでした。もちろんレクサスらしい高級感のある内装や、どっしりと安定した走りなどプレミアムカーとしての魅力を備えていました。
総合的な評価は高く、完成度の高いクルマでしたが、その後モデルチェンジをすることなく2022年10月で生産終了に。SUV人気に押されたことも要因だったと考えられますが、やや保守的なデザインや、ヨーロッパの高級モデルに比較すると見劣りする性能が「割高感」をイメージさせてしまったのでしょう。
UXもCTも、高級ブランドゆえに安く販売することもできず、かといって小柄なボディサイズゆえにハード面でできることが限られてしまい、イマイチよさが伝わりにくいのがこのクラスの難しいところ。クルマの出来はよいのに中途半端に捉えられやすく、高級車を買う人の所有欲を十分に満たしきれない、そんな印象がどうしても残ってしまうのです。
その点、2023年11月にデビューしたレクサス「LBX」は、こういうサイズのプレミアムカーが欲しいと思わせるような設計で話題をよんでいます。いわゆるエントリーモデルとは異なり、こういうサイズのクルマが欲しいというユーザーにしっかりターゲットを絞っています。
価格は標準モデルが税込460~576万円、さらに限定車の「LBX MORIZO RR」は税込650~720万円と相当チャレンジングな値付けですが、サイズはコンパクトでも個性が強調できれば、中途半端な印象は薄れるかもしれませんね。
Text:立花義人、エムスリープロダクション
Photo:LEXUS
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